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02月20日
風景情報
◇北アルプス北部空撮 第一部◇
厳冬期の北アルプス空撮の依頼を受け、松本空港で4人乗りのセスナ機をチャーターし飛び立つ。
北アルプス南部の槍・穂高をメインにと向かって行ったものの、目的地は雲に覆われており、急きょ、
予定を北アルプス北部に変更する。
天気予報では、移動性の高気圧に覆われ快晴のはずだったのだが。
私の長年のカンとデータでも90パーセント近い確率で、快撮の自信があったが見事に外された。
ただ、幸いなことに、北部は空の状態も良く、山々が遥か彼方までクリアーにひしめいている。
この時季、北アルプスの南部が雲に覆われ、北部が快晴などというのは極めてまれなケースで、
望んでも滅多に出会えるものではないのだが・・・。
東の海上に遠ざかって行くはずだった低気圧が、どうして関東で足踏みしたのか・・・。
これも近ごろの異常気象の一つということだろうか。
私は南北に連なる北アルプスを、安曇野の西の縁に沿って、言い換えると北アルプスの東面に
沿って、南から北へと撮り進んで行った。
今回のフライト時間は1時間10分。
チャーター料金は1時間 78000円(税別)で、1人~3人まで搭乗可能。
料金を人数割りするなら、3人で利用した方が得なのだが、開閉が可能な窓が付いているのは
1席のみなので、全員が純度の高い条件で撮影することは出来ない。
撮影者1人に遊覧2人といった3人グループなら、充分利用価値ありといえる。
松本空港内でセスナ機のチャーターが出来るのは現在2社あり、今回は新中央航空㈱を利用、
パイロットは木下孝雄氏。
松本空港からのセスナ機によるフライトは、1時間程の飛行で、これだけの感動的な風景を眺め、
非日常的な体感が出来るのなら、撮影目的ばかりでなく、観光の1つとしても利用価値を感じる。
山岳そのものに興味のあるユーザーのために、各写真の主役の山名とともに、その周辺の山々の
山名も出来るだけ詳しく掲載したいと思うので、キャプション記事が順次変化するかも知れないが、
ご了承いただきたい。
山座同定などにご活用いただけると幸いだ。
北アルプス南部と安曇野 安曇野上空より
セスナ機の座席は前後に2席ずつの4席で、左の前席がパイロット。
撮影用の窓があるのは左後席のみで、A4サイズほどの窓を取り外すことが出来る。
窓を外したとたんにカメラを持つ両手は寒風にさらされ、手袋無しでは耐えられない。
安曇野上空で、左手に並ぶ北アルプス南部の連山から撮影を開始する。
正面中央が常念岳。
常念岳の後方が槍ケ岳・穂高岳方面なのだが、すっかり雲がわいてしまった。
常念岳の左右に連なる山並みは常念山脈とも呼ばれ、左に蝶ケ岳、大滝山、右に横通岳、東天井岳、
大天井岳、そして燕岳、餓鬼岳と続く。
この写真に燕岳と餓鬼岳は写っていない。
常念岳 安曇野上空より
餓鬼岳 安曇野上空より
常念山脈の北端に近い餓鬼岳。
台形の山の右端が山頂で、その右手のピークは唐沢岳。
両山の鞍部に突き出たのが餓鬼のコブ。
餓鬼岳の南峰ともいえる左手のギザギザした部分はケンズリと呼ばれる所。
三大渓谷と後立山連峰 大町市平上空より
餓鬼岳を過ぎて間もなく、山の街・大町市西部のスケールの大きな山岳風景が眼下に広がった。
左の大町ダムの谷が高瀬渓谷、中央から右上へと延びる谷が、立山黒部アルペンルートで知られた
篭川の渓谷、眼下を右手より来るのが鹿島川。
高瀬渓谷は、ひたすら最上部まで詰めると槍ヶ岳山頂に至る。
篭川の渓谷奥には扇沢駅があり、鳴沢岳の下をトンネルで貫いて立山黒部アルペンルートが、
黒部ダムや立山直下の室堂をへて、富山方面と結んでいる。(冬季間は閉鎖)
五竜岳、鹿島槍ヶ岳、爺ヶ岳などの水を集めた鹿島川は画面の右手から左手に流れて、東野口で
高瀬川と一つになる。
中央を手前から奥へと盛り上がる、恐竜の背中の様な山は蓮華岳で、山頂はその直ぐ先で針ノ木岳に
寄り添っている。
爺ヶ岳と後方は立山連峰 大町市中綱湖上空より
爺ヶ岳の右肩の稜線上には、後方の山脈、立山連峰の剣岳が覗いている。
鹿島槍ヶ岳と後方は立山連峰 白馬村神城西側上空より
大町市北端の青木湖を過ぎ、分水嶺の佐野坂を越えると白馬村だ。
後立山連峰のほぼ中央に位置し、山容の美しさで人気の高い鹿島槍ヶ岳は、その特徴的な
双耳峰も手伝って、山座同定をする上で極めて有効なランドマークだ。
右のピークが北峰、左のピークが南峰と呼ばれている。
鹿島槍ヶ岳の右手後方は剣岳、左手後方が立山。
この画面では見えないが、鹿島槍ヶ岳のある後立山連峰と、後方の剣岳や立山の立山連峰との
間には、黒部峡谷の深い谷が横たわっている。
鹿島槍ヶ岳と五竜岳 白馬村神城西側上空より
左が鹿島槍ヶ岳で右が五竜岳。
後方にずらりと覗いているのは後立山連峰。
画面右下から現れ、中央で九の字を描いて五竜岳まで達している尾根は遠見尾根。
画面中央で、九の字の曲がり角に、左下から来た尾根が交差している所が、先日もご紹介した、
小遠見山だ。
五竜岳と唐松岳 白馬村みそらの上空より
左が五竜岳で右が唐松岳。
五竜岳の後方には別山、剣岳、唐松岳の後方には猫又山、毛勝山などが見える。
唐松岳と手前は八方尾根 白馬村みそらの上空より
夏季なら花の尾根として、一般ハイカーの大勢訪れる八方尾根だが、冬季にはベテランの
登山者さえ恐れる危険な尾根と化す。
一見穏やかにも見える広い尾根幅が曲者で、一たびホワイトアウトすると、自分の位置が
分からなくなり、とんでもない所に迷い込んでしまう。
また、北アルプスでも屈指の強風発生域で、尾根上に樹木がほとんど育たないのが、
この尾根の自然環境の厳しさを物語っている。
尾根を登り詰めた先の山頂が唐松岳で、夏季から秋季には大勢の登山者で賑わう。
唐松岳から右に険しく切れ込み、荒々しい影をつくる稜線が不帰嶮(かえらずのけん)で、
後立山連峰縦走の難所として知られている。
唐松岳の背後で、3つ寄り添うようなピークの左が猫又山、右が毛勝山。
八方尾根と二つの山脈 白馬村北城上空より
八方尾根の中部から下部にはスキー場があり、過去にオリンピックの舞台としても使われた。
ゴンドラと2本のリフトを乗り継ぐと、スキー場最上部の八方池山荘まで行けるが、山荘から
一歩先は大自然真っ只中の危険な雪山となる。
セスナ機は八方尾根を過ぎたところで高度を上げながら、左に機種を向け始めた。
後立山連峰と背後の立山連峰の二大山脈が全貌を見せ始めた。
後立山連峰と白馬の里 白馬村松川渓谷上空より
左に機種を向けたセスナ機は、松川渓谷に沿って更に高度を上げていった。
左手には、これまで撮影してきた唐松岳や、五竜岳、鹿島槍ヶ岳などの後立山連峰が一列に
重なり始めた。
更に左手には白馬村の里と、その奥には青木湖や木崎湖が見える。
後立山連峰 白馬村白馬大雪渓上空より
白馬大雪渓の上空で後立山連峰を一列に見通す。
左が杓子岳・右が鑓ヶ岳 頂上宿舎上空より
白馬大雪渓を詰めた先で後立山連峰を飛び越えた。
左手後方直下を振り返ると、直ぐ眼下に白馬三山の中の二峰、杓子岳と鑓ケ岳があった。
◇北アルプス北部空撮 第二部◇
前半では、南北に長く連なる北アルプスを東面に沿って南から北へと撮影して来た。
南部の常念山脈の常念岳から順次撮影し、北部の後立山連峰の杓子岳まで撮影したところで
180度折り返す。
後半は後立山連峰を飛び越し、裏側、西面に沿って北から南へと向かうことにする。
杓子岳と白馬岳の間を東から西へ飛び越えたセスナ機は、更に左へと旋回し、後立山連峰の、
西側に回りこみ、機首を南に向けた。
左手にはこれまで撮影して来た後立山連峰がずらりと彼方まで並び、右手には立山連峰が同様に
連座する。
両山脈の間が黒部峡谷でセスナ機は、その峡谷に沿って北アルプスのただ中を上流へと向かって行く。
黒部峡谷下流部 中背山上空より
左の窓から杓子岳と鑓ケ岳を撮影した直後、右の窓のアクリル越しに富山県側を撮影。
あいにく日本海は判別出来ないが、黒部川が黒部市と入善町の間を横切り、河口部へと近づくのが
かすんで見える。
直ぐ眼下左の山は百貫山、右が不帰岳、百貫山の後方が駒ケ岳。
左から唐松岳・五竜岳・鹿島槍ヶ岳 中背山上空より
先ほど東側から撮影した山を、今度は西側から撮影する。
この稜線は縦走ルートとして人気が高い。
鹿島槍ヶ岳と右端は爺ヶ岳 五竜岳西側上空より
鹿島槍ヶ岳の双耳峰は裏側から見ても特徴的だ。
これらの山の向こう側は大町市。
爺ヶ岳 剣沢上空より
中央に刻まれた谷は棒小屋沢。
山頂を左に下った稜線上には冷池山荘、右に下った稜線上には種池山荘がある。
後方は大町市。
黒部ダムと黒部峡谷 剣沢上空より
機首を少し右に向けてもらうと、黒部ダムが見えた。
二つの大山脈に挟まれた秘境のダムに、夢中でシャッターを切った。
峡谷はダムから下を下ノ廊下、ダム湖上流の東沢出会いより上流を上ノ廊下と呼ぶ。
谷の中央が白竜峡・左が十字峡 黒部別山北峰上空より
眼下に下ノ廊下の名所、十字峡と白竜峡が見える。
十字峡の名の由来は、向こうから下りてくる棒小屋沢と、こちらから下りてゆく剣沢が同じ位置で黒部川本流に合流するため、その形状から名付けられた。
剣岳 黒部別山北峰上空より
右の窓に剣岳がのぞいたので、アクリル越しに撮る。
左の肩の部分が前剣、画面右端の角の部分が小窓ノ王と呼ばれている。
下ノ廊下と後立山連峰 黒部別山南峰上空より
下の廊下では、二大山脈が水中から一気に盛り上がっている。
山は左が鹿島槍ヶ岳、中央が爺ヶ岳。
画面には写っていないが、爺ヶ岳から右の稜線をたどると岩小屋沢岳、鳴沢岳、赤沢岳をへて、
スバリ岳から針ノ木岳へと続く。
黒部ダム だいかんぽう上空より
稜線上のピークを左から右にたどると赤沢岳、スバリ岳、針ノ木岳、北葛岳。
スバリ岳の後方の大きなピークは蓮華岳で、北葛岳の右手の台状のピークは船窪岳。
黒部ダム・平ノ渡場 中ノ谷上空より
湖面は結氷しているが、流入部では水の流れが、二頭の竜が絡み合う様な絵模様を
描いていた。
右手前から延びた尾根の先が、水際で何かの口の様に開いている中央が平ノ渡場で、
登山シーズンには渡船が、対岸の針ノ木谷の右手と往復している。
渡場の近くには、平ノ小屋という山小屋もある。
渇水期の冬季は水位が下がり、流入部が渡場より下流になっているが、本来なら、
右手から来る黒部川本流部の、もっと上流まで湖面が延びている。
黒部ダムと後立山連峰 ヌクイ谷上空より
稜線上のピークを右から左にたどると、北葛岳、蓮華岳、針ノ木岳、スバリ岳、少し
間を空けて爺ヶ岳、鹿島槍ヶ岳。
針ノ木岳と蓮華岳は重なって一つの山体に見えるが、実際は針ノ木岳が手前にあり、
蓮華岳はその後方にある。
これら連山の向こう側は大町市だ。
左奥が蓮華岳 上ノ廊下と東沢出会い上空より
左端は山体の半分が切れてしまったが針ノ木岳、その右の白い山が蓮華岳、次の
小さなピークが北葛岳、そして台状の船窪岳、丸い頭の不動岳。
左が南沢岳・右が烏帽子岳 東沢谷入口部上空より
ほとんど一つの山体に見えるが、頂部に小さなカールがあるのが南沢岳、
頂部に黒っぽい小さな突起があるのが烏帽子岳。
この山の向こう側には、高瀬ダムが隠れている。
画面には写っていないが、烏帽子岳から右の稜線は、三ツ岳、そして野口五郎岳へと続く。
右手前の南沢岳と高瀬ダム 南沢岳北西上空より
セスナ機が南沢岳の上空に差し掛かると、高瀬ダムが姿を現した。
高瀬ダムは結氷していない。
右の三ツ岳と高瀬ダム ブナ立尾根上空より
南沢岳を飛び越えたセスナ機は、機首を高瀬ダムの上流方向にむけた。
ひたすら一直線に延びた高瀬ダムとその上流の高瀬渓谷。
あいにくの雲で見ることは出来ないが、谷を登り詰めた先には槍ヶ岳がある。
右手稜線上の雲との境に、三ツ岳が見える。
黒部峡谷上流部 東沢上流部
セスナ機は右に旋回し、烏帽子岳を越えて再び東沢上空にもどる。
眼下に横たわるのが黒部上流域で、眼下中央の東沢谷出会いより左手が上ノ廊下と
呼ばれる、上流の核心部。
黒部ダムは画面右端から先にある。
正面の山は立山連峰の左が越中沢岳、中央が鳶山で、その右の鷲岳や獅子岳は
雲で判別不能。
二つの山脈と黒部峡谷 東沢谷上空より
撮影の終了をパイロットの木下さんに伝えると、セスナ機が右に旋回を始めた。
黒部峡谷と二つの山脈に別れを告げる。
左が立山連峰、右が後立山連峰。
南沢岳以北の後立山連峰 東沢谷上空より
立山連峰を北向き一列に重ねて撮影しつつ、大町市側に飛び越して行く。
彼方に、小さいながら鹿島槍ヶ岳の双耳峰が確認出来る。
後立山連峰と右手奥が大町市北西部 北葛沢上空より
後立山連峰が完全に一直線に重なる。
どれがどの山やら山座同定不能・・・。
右手に大町市の街が現れる。
青木湖も見える。
更にその遥か先に、信越境の山群が見える。
大町市北西部他 鍬ノ峰上空より
後立山連峰を飛び越し、鍬ノ峰上空に差し掛かると、眼下に大町ダムが現れた。
大町の街や木崎湖や青木湖、そして信越境の山群まで入れて、スケールの
大きな細密画を撮影する。
パイロットの木下孝雄氏
ベテランパイロットは、注文の多い乗客の要望にベストを尽くしてくれた。
お疲れ様でした。